Cuba

キューバの日々はまるで夢のよう!

Contributed by anna magazine

Trip / nov.15.2017



ジリジリと照りつける太陽のせいか、キューバの景色はやけに眩しい。ピカピカに磨かれたあのクラシックカーは、一体いつの時代のものなんだろう? ハバナの街では物珍しい私たちをジッと見る目が鋭い。肌の色はもちろん違うし、スペイン語もわからない。長いアメリカ滞在を経て、バハマ諸島、そして最終目的地キューバへと。随分と前に日本を離れ、すっかり海外に慣れたと思っていたのに、キューバに来てまた子どものように戻ってしまった。



実は今回の旅の途中で「最終地はどこ?」とさまざまな人に質問をされるたび、「キューバ」と答えると、アメリカ人の誰もが「羨ましい!」、「最高だね」と答えていた。国交が回復されたことで、アメリカの有名人の間ではキューバ旅行が流行っているらしい。確かに私も一番楽しみにしていた場所でもあるけれど、それは何でだろう? ぼんやりとした期待を胸にキューバの中心地であるハバナに入る。



ハバナは19世紀やそれ以前に建てられたスペイン・コロニアル時代の街並みがそのまま残り、クラシックカーがごく当たり前に行き来している。1959年の革命戦争から57年、社会主義国家としての道を歩んできたこの国は、他の国のように新しい資源が次々と入ってこないからだという。国民の食料は配給制だし、外国人用のCUCと、国民が使うCUPの2種類の通貨があり、国境も強く感じさせる。「給料はみんな一緒なんですかね? 国外にも出たことないんだろうな」と、その暮らしを想像しながら、ハバナの街を歩き回る。



チェ・ゲバラなど革命家たちの存在感に溢れたハバナの街は、古い街並みと相反するように今を全力で生きる人々の姿がある。タクシーの運転手は次々と声をかけてくるし、街を行く人々の主張も強い。ヨーロッパ調の建物と、古いアメ車、アジアの発展途上国のような人々の熱気、そしてカリブ海。ここは一体どこなんだ? 今まで見たことのないその世界はまさにカオスで、馴染みのないキューバ料理に思わず泣きそうになる。





数日後、クルマで数時間走ってトリニダーの街に向かう。ハバナの騒がしい様子とはまったく違い、軒先でのんびりと糸を紡ぐおばあさんの幸せそうな姿を見かける。訪れている人も若い女性が多いし、陶器や手芸品など、街に並ぶ物もガラっと姿を変える。繊細なキューバ人の手仕事になんだか心が安らぐ。



広々とした大地には牛や馬が数頭だけ。つながれた動物なんてどこにもいなくて、みんなが自由だ。ああ、これもキューバなんだ。滞在中、「一緒に踊ろうよ。日本のダンスも教えて!」と笑顔を見せた彼らを満足させられる踊りが、一度も思い当たらなかった。



少し反省して、音楽を奏でるキューバ人の置物を買って帰ったけど、やっぱりまだ思い当たらない。私たちの滞在中、アメリカからはマドンナが遊びに来ていたらしいけど、彼女なら一緒に踊れたんだろうか? ぼんやりとキューバのことを思い出しながら、トリニダーで買った美しいテーブルクロスをベランダに干す。あの国に心地よい風は吹いていたのかな? それすらもう想像できない。キューバの日々はまるで夢のようだった。



写真:相馬ミナ/文:菅 明美

Tag

Writer