Magic Island

こっそりとした自分の中だけの、素晴らしく贅沢な時間。

Contributed by anna magazine

Trip / nov.15.2017



マウイの旅を思い出すとき、島の人々の優しい笑顔とハナの街が浮かぶ。こっそりと自分の中だけに、素晴らしく贅沢な時間があったことを覚えている。

女性の体のような形が特徴のマウイは、島の中心辺りに位置するカフルイ空港に降り立ってみると、選択肢が大きく分かれる。西の町はメインランドの人もお気に入りの観光スポットだし、東にはハワイらしい大自然が残るという。カウアイ島、ハワイ島には訪れたこともあったので、実はスノッブな印象のあるマウイにはあまり興味がなかったのだけど、実際に訪れてみると、行く場所によって全く違う表情を見せるこの島は、想像と違ってなんだか新鮮だった。そんなマウイの中でも、強く興味を抱いたのは最果てにあるハナの街。天国の街と呼ばれるそこはいったいどんな所だろうとワクワクしてしまった。



クルマの運転は危険ですよ、と何かの情報で教えられた。ハナの街に行くには617ものカーブがあり、とにかく大変な道のりなんだと記してあった。実際に運転してみると、これぞハワイと言わんばかりの雄大な自然があり、美しき渓谷が次々と姿を見せる。少ないながらも出会う人々は穏やかで楽しそうだし、鳥や馬も優しく微笑む。何もかも怖くなかった。むしろ、マウイ島の大きなエネルギーにすっかり包まれていることの方がとても不思議で、たった数時間しか走っていないのに、ハナの町に着いただけで思わずとても安心してしまった。

都会の生活に慣れている自分は、自然の息吹しか感じられない場所に少し緊張したのかもしれない。それを優しく包みこむようなハナの街は、派手なものは何もないけれどまさにオアシスで、天国と呼ばれるのもわかる気がする。ちょっとスーパーに寄ってコーヒーを飲む。こんな当たり前のことが、なんて幸せなことなんだろうと思ってしまう。ここにいると、島の豊かさが体に覆いかぶさるようで、よくも悪くもいつも通りの動きができない。頭で何にも考えられず、ただ自然に身を任せるような感覚は、なんだかとても久しぶりだ。



なんとなく立ち寄った無人のフラワースタンドが、とても気に入ったのでしばらく見ていたら、そのオーナーのジミーが現れて庭を見せてくれた。突然降り出した豪雨に心が折れそうになったけど、構わず嬉しそうに花を見せてくれる彼に、少し自分の小ささを感じてしまった。ああ、今日も彼らのほがらかさに嫉妬してしまう。だから何度もハワイに通ってしまうのだろう。

ハナに一泊した帰りに通ったのは、行きとは違いハレアカラ国立公園を下に迂回するようなルート。そこは今までの緑生い茂る豊かな風景とは正反対で、水のない惑星のようだった。ただ延々と続く砂漠のような風景はまるでむき出しの地球。とにかくマウイはどの表情も驚きにあふれていた。

マウイはどうだった? そう聞かれるときっと詳しくは答えられない。だけど、ジミーがハナの町でくれた花束をオアフまで持って帰ってしまった。このままずっと、マウイの空気を感じていたかったのかもしれない。



写真:相馬 ミナ/文:菅 明美

Tag

Writer